国防問題
国土を侵される前に、通信と情報はすでに奪われています
通信、電力、物流。この三つは、国家の命脈に等しい存在です。これらが外部に握られ、敵の意志によって止められたとき、国は銃一つ撃たれずとも崩壊いたします。現代における戦いとは、爆撃や上陸ではありません。通信を遮断され、電力を奪われ、物流を滞らされたとき、その国家は抵抗する術を失い、支配を受け入れる他なくなります。
通信分野では、中国の華為技術、いわゆるHuaweiと中興通訊、いわゆるZTEが、日本国内の通信設備に深く入り込んできました。これらの企業の機器が中国本土へ不審な信号を送っていたことは、米国の調査機関により公式に認定されています。米国政府は両社を国家安全保障上の脅威と認定し、令和元年以降すべての政府機関から排除し、撤去を命じました。さらに、イギリスやオーストラリア、カナダなども同様の措置をとり、自国内の通信主権を守る対応を急ぎました。
一方、日本では政府調達からの除外こそ行われたものの、すでに導入された機器の多くが地方自治体や民間施設に残されたままとなっており、通信という国家の動脈が他国の干渉を受けうる状態に置かれていることは、非常に深刻です。通信とは情報の血流であり、これが止められれば、政府の指令も防災の通知も、すべての経済活動も成り立たなくなります。
さらに、情報管理においても重大な問題が進行しています。中国のアリババグループは、日本国内でもクラウド事業を展開してきましたが、令和4年からは日本国内のデータセンターを閉鎖し、顧客データをシンガポールの施設へ移転する方針を打ち出しました。シンガポールは名目こそ中立を掲げておりますが、通信や経済、物流の分野において中国資本の影響が極めて強く、実態としては中国の属国に等しい構造にあります。
アリババは中国の法律により、国家情報法の下で政府による情報提出命令に従う義務を負っています。したがって、たとえサーバーがシンガポールに移されたとしても、情報は中国共産党の意のままに把握される恐れがあります。日本企業や自治体が預けた顧客データ、個人情報、取引記録が、もはや日本の統治下にないという事実を、国民は直視すべきです。
これらの通信や情報基盤が敵の意志で遮断されたとき、まず国家は外部との連絡を絶たれ、政府は国民に指示を出す手段を失います。金融機関は停止し、交通網は麻痺し、防災や医療も機能しなくなります。物流が止まれば、都市部では食料と生活物資が三日と持たず、混乱が始まります。電力が落ちれば、通信も冷蔵も暖房も止まり、病院や庁舎は閉ざされ、国民の命は真冬の夜のように晒されることになります。
国を守るとは、外敵を追い払うことだけではありません。国家の内部構造を、いかなる外部勢力にも制御されないように保つことが、真の防衛です。国民の通信と情報が、他国に覗かれ、奪われ、止められる危険に晒されている今、それを回復せずに平和を語ることは、もはや無責任というほかありません。
通信、電力、物流を取り戻すことこそ、国を取り戻す第一歩です。静かなる侵略に、静かに滅びぬよう、我が国の命脈を我が手に戻さねばなりません。